信州大学 工学部 機械システム工学科

中村研究室 ー設計工学研究室ー

 信州大学 工学部 機械システム工学科の学生たちが日々学んでいる中村研究室 (設計工学研究室)。

 ここではものづくりと地球環境、および人間との“調和”を実現する「最適化」をテーマに物理現象の数値解析や機械設計に関する研究を行っている。 今回は中村研究室(設計工学研究室)中村教授と学生さんにお話を伺った。


中村研究室でどのような研究に取り組んでいるのですか?

中村教授:製品の製造から使用・廃棄、材料の再利用、安全・安心の保証まで、物づくり全般における環境適合を指向した「最適化」をテーマに研究しています。

例えば、日本列島各地における太陽光パネルの最適な設置位置などがあげられます。日本列島は南北に長いので、太陽光の当たる角度も日照時間も、全国各地で違います。

さらに、自然条件も沖縄と北海道では大きな差があり、長期間運用するための条件も異なります。その地域ごとの最適な太陽光パネルの設置位置や角度を、数値解析から導きだします。



実際にAIがネズミを見つけてドローンを飛ばして追いかけるという話になったときはどう思いましたか?

 

中村教授:工場の建屋と内部の装置,床に置いてある原料の入ったフレコンを3次元の空間データとして取得(「3次元再構成」と言います)する必要があり、研究室ですでに所有している技術は役に立つな、と思いました。

 

ただ、すぐに実用化できるところまで研究が進んでいません。3次元再構成を行うソフトウェアは存在するのですが、装置の配管のような細長く入り組んだ形状のものを認識するのは苦手なのです。

 

そこで、今回のプロジェクトをきっかけに、新たなソフトフェアも開発してチャレンジしていこうと考えています。

 

われわれとしても研究内容の実装は大きなテーマですので、社会の課題に挑戦できる機会はありがたいです。

 

 

 

そうだったんですね。松本工業高校とのコラボレーションは中村教授のアイディアだったそうですが、どのようなきっかけだったのでしょうか

 

中村教授:先ほどのとおり研究室で所有する3D再構成技術にはまだ課題があったことと、ドローンの自立航行は多くの課題がありハードルが高いため最初はラジコンカーでやろうと考えていたんです。床の上の移動であれば2次元で済みます。

 

それに加えて、工業高校の生徒さんならばラジコンカーの無線操縦技術を持っているだろうと考えました。

 

さらに、松本工業高校さんが地元の老舗うなぎ屋と連携して、うな重を宇宙空間に打ち上げるというプロジェクトをやっていたのを思い出したんです。

 

あのプロジェクトを進めた先生ならば、ネズミを検知したらラジコンカーを自動で走らせて追い払うことができるんじゃないかと考え、お声がけをさせていただきました。

そういった流れで松本工業高校さんに相談されたんですね。

中村教授:はい。松本工業高校の三澤先生にお会いして話をすると、ドローンの方が簡単じゃないかとご意見をいただきました。

四輪のラジコンカーで米ぬかが付着しているところを走ると、スリップの誤差がすごく大きくなってしまう。ドローンだとそんな心配がないとアドバイスをいただいたんです。

また、原料の入ったフレコンを避けて進まなくても、自由に飛べる空間に一気に上昇することができます。

ドローンには、プロペラを別々に制御するコンピューターがついていて、三澤先生はそれをプログラムにより直接制御する技術をお持ちでしたので、実現性が高く、実装も早いことに気づいたのです。

高校と大学の連携というのはよく行われているのですか?

中村教授:普通科高校の生徒さんが大学の研究室の指導を受ける課題研究が行われている事例はすでにあります。

また、長野工業高校の生徒さんが信州大学工学部の研究室で各自のテーマで研究を体験する事業は毎年行われています。

教育委員会や学校長の了解のもと企業との共同研究に高校生が加わる事例は今回が初めてと思います。

 

インターンみたいなものですね。

中村教授:そうですね。研究体験は各大学で盛んに行われています。

高大接続の観点から、研究室と交流をもってもらい、高校生に信州大学の魅力を感じてもらえればと考えています。

さらに、実社会での研究開発を体験してもらえればキャリア教育の観点からも効果が期待できます。

松本工業高校さんとのコラボレーションは初めてなんですか?

中村教授:これまでにも取り組みが存在した可能性はあるのですが、制度としてちゃんと立ち上げて、教育委員会の了解を得て行うのは初めての例のようです。

高校、企業との連携に対する期待はありますか?

中村教授:信州大学を知ってもらい、モチベーションの高い学生にたくさん来て欲しいですね。

そして地域と日本の技術発展に貢献してもらいたいです。

本プロジェクトを通じて、従来のインターン制度にとらわれない、深い交流を続けていきたいと思っています。